日本昔話の最高傑作「三枚のお札」
僕は日本昔話が好きだった。
なかでも、やまんばの出てくる話がたまらなく好きで、
その中でもベストストーリーだと思っているのが「三枚のお札」だ。
山姥の家とは知らずに一泊することになった小僧。
夜中、障子の向こうで物音がして目を覚ます。
そっと障子の隙間から覗いてみると、そこには――
さっきまで優しそうだったおばあさんが、
舌なめずりをしながら包丁を研いでいる姿。
こんな恐ろしいシチュエーションが他にあるだろうか。
これはもうホラーの王道だ。
「優しい人だと思っていた相手の正体が化け物だった」
という、あの一番ゾッとするやつである。
そこから始まるのが、三枚のお札を使った大脱走劇。
札を投げると山になり、
札を投げると川になり、
札を投げると大火事になる。
一気にホラーから異能力バトル漫画の世界へ突入する。
しかもバトルのスケールがでかい。
山姥は川の水を全部飲み干し、
その水で大火事を消して追いかけてくる。
強すぎるやろ(笑)
結局、三枚のお札では山姥を倒すことはできず、
小僧は寺に逃げ込む。
そして最後に山姥を倒したのは、老僧の知恵だった。
山姥のプライドをくすぐって小さくさせ、
餅に挟んで食べてしまうという、
なかなかにシュールな決着。
一気にコメディタッチになるこの展開もまたいい。
そしてラストはお約束の説教。
「わしの言いつけにそむいて山に入るからじゃ、ばかたれ」
げんこつ一発。
やはり年長者の言うことには従うべきなのだ、
という道徳まできっちり教えてくれる。
ホラーあり、バトルあり、コメディあり、教訓あり。
これだけのエンタメ要素を無理なく自然な形で詰め込んだ、
なんとも贅沢な話。
それが「三枚のお札」なのである。
