生きてこそ。でも、何のために生きるんだろう。

最近、Netflixで「ダウンタイム」というドラマを観ました。

美容医療の世界を舞台にしたドラマです。

松岡茉優さんの演技にも引き込まれたのですが、経営者という立場のせいでしょうか。

僕はどうしても、仲里依紗さん演じる美容クリニックの経営者側の目線で物語を追ってしまいました。

詳しく書くとネタバレになってしまうので、内容には触れません。

ただ、観ながらずっと頭に残ったことがあります。

「美容」と「医療」。

似ているようで、見ているものが少し違うんですよね。

医療がまず大切にするのは、当然ながら命です。

危険があるなら止める。
身体を守る。
そして、できるだけ長く生きてもらう。

「生きてこそ」

これはもう、誰も否定できないと思います。

一方、美容の世界には、

「人生の中で、自分が輝いていると思える瞬間があってほしい」

そんな願いもあるんじゃないでしょうか。

長年抱えてきた悩みがある。

それがなくなったら、もう少し前を向けるかもしれない。

鏡を見るのが少し楽しくなるかもしれない。

誰かに会いたくなるかもしれない。

そう考えると、美容もまた、その人の人生に関わる仕事なんですよね。

どちらも分かる。

だから難しい。

そんなことを考えていたら、いつの間にか僕は「食べること」を考えていました。

例えば、これはあくまで極端な例ですが。

食事制限が必要な高齢の方がいたとします。

身体のことを考えれば、

「これは控えましょう」
「あれも食べすぎないようにしましょう」

となるでしょう。

当然です。

ところが本人が、

「コーラ飲みたい」
「アイス食べたい」
「好きなもの食べたい」

と言ったらどうだろう。

もちろん僕ら食に携わる人間が、

「好きなもん、好きなだけ食べたらええ!」

なんて言うわけにはいきません。

それは違う。

でも一方で、

「身体に悪いからダメです」

その一言だけで、その人の「食べたい」という気持ちを全部片付けてしまっていいのだろうか。

僕は少し考えてしまいます。

食べるというのは、単なる栄養補給ではありません。

子どもの頃に好きだったもの。

家族と食べたもの。

仕事を終えて食べる晩ごはん。

暑い日に飲む冷たいジュース。

たまに食べるアイスクリーム。

そして、

「今日はこれが食べたいなあ」

という気持ち。

人間の「食べる」には、思っている以上にたくさんの幸せが詰まっています。

長生きするために食べる。

それはもちろん大切です。

でも、

生きている時間を幸せにするために食べる。

それもまた、食べることの大切な役割なんじゃないでしょうか。

もちろん、この二つは本来なら対立するものではありません。

健康で、好きなものも楽しめる。

それが一番です。

ただ人生には、ときどき簡単には割り切れない場面がある。

「生きてこそ。」

確かにその通り。

でも、

「何のために生きるんだろう。」

そこまで考え始めると、途端に答えが難しくなります。

僕らの仕事は医療ではありません。

命について判断する仕事でもありません。

ただ毎日、

「食べる」

という、人が生きることのすぐそばにいる仕事です。

だからこそ、

身体のための食事も大切にしたい。

同時に、

「これ、食べたかったんよ」

そう言って嬉しそうに食べる人の顔も、大切にしたい。

どちらが正しいのか。

僕には答えは出ません。

たぶん簡単に答えを出してはいけない話なんでしょう。

……などということを考えながら観ていました。

美容医療のドラマを観ていたはずなんですけどね(笑)。

たぶんこれも職業病です。