最近、InstagramやPOPを作る時に、AIを使うことがずいぶん普通になってきました。
写真を少し明るくする。色味を整える。揚げ物をちょっとサクッと見せる。ご飯をふっくら見せる。
昔なら写真加工の知識がある人にお願いしたり、専門のソフトで時間をかけたりしていたことが、今では「もうちょっとおいしそうにして」で、かなりのところまでやってくれます。
便利です。
花むらでも、かなりお世話になっています。
もう写真加工もPOPも、「AIを使うこと」そのものは特別でも何でもない時代になってきたんやろなあと思います。
ただ。
飲食店として、ここでひとつ大きな問題があります。
AI、
おいしそうにしすぎるんです(笑)
こちらとしては、
「ちょっと明るくして」
くらいのつもりで頼んでいる。
ところが返ってきた写真を見ると、
照りっ照り。
サックサク。
肉汁ジュワッジュワ。
ご飯ツヤッツヤ。
おい。
ちょっと待て。
そこまで言うてない(笑)
こちらの弁当が、本人の知らんところで、めちゃくちゃ料理上手になって帰ってくることがあります。
これが飲食店の、
「自分でハードル上げすぎ問題」
です。
Instagramで、めちゃくちゃおいしそうな写真を見せる。
お客様が、
「うわ、これ食べたい!」
となる。
ご来店いただく。
ふたを開ける。
……
「あれ?」
これが一番怖い(笑)
もちろん、AI加工が悪いわけではありません。
実際に目で見る商品と、スマホで撮った写真では、どうしても色や明るさが違って見えます。

上が比較例です。左がAIに調整してもらったもの。右がそのまま。
実物ではきれいなきつね色なのに、写真にすると妙にくすんで見えたりする。炊きたてのご飯なのに、画像ではなんとなく元気がなかったりする。
そういうものを実物に近づける調整は、むしろ必要だと思っています。
問題は、その先です。
「実物をきちんと伝える」
つもりだったのが、
いつの間にか、
「実物よりええものを作る」
になってしまう。
AIは非常に素直です。
「もっとおいしそうに」
と言えば、本気でおいしそうにしてくれます。
「もっとボリューム感を」
と言えば、気を抜くと唐揚げが岩石くらいになります。
「エビフライを立派に」
と言えば、そのうち伊勢海老みたいになります。
AI、サービス精神が旺盛すぎます(笑)
でも店側はそこで、
「おお、ええやん!」
だけで終わったらあかんのですよね。
その写真を見たお客様は、その写真を基準に来てくださるからです。
つまり、宣伝がうまくなればなるほど、実物に求められるものも大きくなる。
自分で広告を派手にして、自分で期待値を上げて、実物を出す段階になってから、
「いや、そこまで期待されても……」
では通りません。
いやいや。
期待させたん、こっちです(笑)
これはPOPも同じです。
「極上!」
「究極!」
「史上最高!」
「感動の一口!」
「日本一!」
なんて言葉を並べれば並べるほど、お客様の頭の中では、とんでもない弁当が出来上がっていきます。
そして、そこに普通においしい弁当が登場する。
弁当は何も悪くない。
ちゃんと100点取ってる。
なのに広告担当が勝手に、
「宇宙一!」
とか言うから、なんとなく負けた感じになる。
かわいそうな弁当です(笑)
AI時代になって、写真も文章もPOPも、ものすごく簡単に上手に作れるようになりました。
だからこそ飲食店は、以前より慎重にならないといけないのかもしれません。
AIを使わない、ではなく。
AIを使って、どこまでやるか。
そこは人間が判断しないといけない。
私は写真加工の基準って、
「実物を一番おいしそうに見せる」
ではなく、
「実物のおいしさをちゃんと伝える」
くらいがちょうどいいと思っています。
似ているようで、この二つは結構違います。
実際の商品が100なら、
写真も100くらい。
できれば実物を見た時に、
「あ、写真よりちょっとええやん」
くらいが理想です。
逆は怖い。
写真120。
POP150。
期待値200。
実物100。
100点の商品なのに、お客様から見たら50点になってしまう。
完全に自爆です(笑)
これからAIによって、「見せ方」はどんどん上手になっていくと思います。
だからこそ飲食店に必要になるのは、加工技術そのものより、
「ここで止めとこ」
と言える感覚なのかもしれません。
便利なものは、これからもどんどん使います。
Instagramも、POPも、メニュー写真も。
ただし、最後にお客様が見るのは、AIが作った画像ではなく、目の前の商品です。
宣伝でハードルを上げるなら、そのハードルを実物がちゃんと越えられるところまで。
むしろ、
「あ、写真よりええやん」
と言ってもらえるくらいが、一番気持ちいい。
AI時代。
飲食店が気をつけることは、AIに仕事を奪われることより先に、
AIに自分の店のハードルを上げられすぎないこと。
なのかもしれません(笑)
