小銭を数える数十秒の価値~最低賃金1,101円の時代に、あえて人に残したい仕事~

10月3日から、和歌山県の最低賃金が変わります。

現在の1,045円から、

1,101円へ。

56円アップです。

経営者として正直に申し上げます。

苦しい(笑)。

いや。

笑っている場合ではない。

人を多く必要とする商売にとって、人件費の上昇というのは非常に大きな問題です。

もちろん最低賃金が56円上がったからといって、会社の人件費が単純に「人数×56円」増えるだけではありません。

最低賃金より上の時給で働いている人とのバランスも考えなければならない。

社会保険料などの負担もある。

そして何より、原材料も光熱費も物流費も上がっている。

中小企業にとっては、なかなか厳しい時代です。

SNSなどを見ていると、

「それくらいの賃金も払えない会社なら、淘汰された方がいい」

そんな意見を目にすることもあります。

なかなか手厳しい。

少々乱暴な気もします。

でも一方で。

働いてくれている従業員の待遇を少しでも良くしていく。

これは経営者として、当たり前に考え続けなければならないことだとも思っています。

「苦しいから払えません」

だけでは、やっぱり済まない。

では、どうするのか。

機械化する。

自動化する。

無駄な作業を減らす。

AIを使う。

今まで10人でやっていた仕事を、ずっと10人でやり続けることを前提にしない。

人手不足の時代でもあります。

おそらくこれからは、

「人を減らすための効率化」

というより、

「人にしかできない仕事に、人の時間を使うための効率化」

が必要になってくるんじゃないかと思っています。

花むらも例外ではありません。

使える機械は使いたい。

効率化できるところは効率化したい。

AIだって使います。

むしろ僕自身、AI大好きです(笑)

ところが。そんな僕でも、

「ここだけは、できれば機械に任せたくないなあ」

と思っている場所があります。

さて。

どこでしょう?

……

正解は、

レジです。

スーパーでもコンビニでも、セルフレジを見かけることが本当に増えました。

もちろん僕も使います。

便利です。

早いです。

人手不足への対応という意味でも、非常に優れた仕組みだと思います。

セルフレジそのものを否定する気はまったくありません。

でも。

花むらのレジを見ていると、

「ここは少し違うかな」

と思うことがあります。

花むらには、ご年配のお客様もたくさん来てくださいます。

レジに立っていると、ときどきこんな光景があります。

がま口を開けて、

じゃらり。

小銭をレジ台に出して、

「悪いけど、これ数えてくれる?」

スタッフが、

「はいはい」

と言いながら、一緒に小銭を数える。

ほんの数十秒の出来事です。

セルフレジなら、お客様自身で硬貨を入れれば機械が一瞬で計算してくれます。

効率だけを考えれば、間違いなくそちらの方がいい。

でも僕は、

この

「悪いけど、これ数えて」

を、なくしたくないんです。

もちろん、ご年配のお客様でもセルフレジを難なく使われる方はいくらでもいらっしゃいます。

年齢の問題だけではありません。

ただ、

分からなければ聞ける。

ちょっと困ったら頼める。

「今日はどれがおすすめ?」

と聞ける。

「この前のあれ、おいしかったで」

と言ってもらえる。

「ご飯、少なめにできる?」

と相談できる。

 

そういう何気ない数十秒が、花むらのレジにはあります。

 

生産性という数字だけで考えれば、

何も生み出していない時間なのかもしれません。

 

でも。

僕はそうは思わない。

 

「悪いけど、これ数えて」

と気軽に言ってもらえる店であること。

 

それも地域のお弁当屋の仕事なんじゃないかと思っています。

 

これから人件費はもっと上がっていくでしょう。

 

人手不足も簡単には解消しないでしょう。

 

だから花むらも、もっと効率化しなければならない。

 

機械に任せられる仕事は、機械に。

AIに任せられる仕事は、AIに。

やらなくてもいい仕事は、思い切ってやめる。

 

でも同時に、

「何を機械にするのか」

だけではなく、

「何を人に残すのか」

も考えていきたい。

 

効率化と、人を大切にすることは、

たぶん反対ではありません。

 

機械にできる仕事を機械に任せるからこそ、

人にしかできない仕事に、人の時間を使える。

 

いつまで有人レジを続けられるか。

将来のことまでは分かりません。

 

それでも今は、

がま口から小銭をじゃらりと出して、

「悪いけど、これ数えて」

と言われたら、

「は~い」

と言える弁当屋でありたいと思っています。

 

56円。

経営者にとっては、決して小さな数字ではありません。

だからこそ、

人件費を単なる「削るべきコスト」として見るのではなく、

その人に何をしてもらうのか。

 

人にしかできない仕事とは何なのか。

そこまで考えるのが、これからの経営なのかもしれません。

 

……まあ。

レジが完全無人になったら、

「今日どれがおすすめ?」

と聞かれた機械が、

「データを分析した結果、本日の推奨商品はこちらです」

とか言い出す日も来るんでしょうけどね(笑)。

でも、

小銭は一緒に数えてくれないでしょ。

たぶん。