足さないという選択

 

何かを足していくのが 当たり前だと思っていた

 

塩をふる オイルをかける 香草を添える

 

そうすれば美味しくなる、 そう信じていた

 

でも、今夜 トマトを切って モッツァレラチーズをはさんだとき

 

ふと思った

 

「このままでいいかもしれない」と

 

塩もふらなかった オイルもかけなかった ただ、トマトとチーズをそっと重ねただけ

 

それなのに 口に入れた瞬間、じんわり広がるものがあった

 

やさしさ 静けさ 余白

 

足さなかったことで ようやく出会えた味がある

 

人もそうかもしれない

 

言葉を重ねすぎたり 無理に自分を飾ったり 誰かと比べたり

 

そうやって “もっと”を求めることで 本当の自分を見失っていたかもしれない

 

足さないことは、諦めではない むしろ 「これで十分」と認める強さかもしれない

 

トマトとモッツァレラのあいだに そんなことを教えられた夜