天空の赤いポスト

伊勢志摩スカイラインを、ぐいぐい登っていった。

 

登るほどに景色はどんどん開けて、 ああ、山ってこういうもんだったなと、 心がちょっとだけ真面目になる。

 

そして、頂上手前で―― 出会った。

 

赤いポスト。

 

 しかも、塀の向こうから、ぬっ…と顔だけ出してる。 ちょっとシュールだけど、なんか、すごくいい。

 

正式には「天空のポスト」っていうらしい。

 

で、ちゃんと現役で手紙も出せる。 風景を背負って、堂々とそこにある。

 

不思議だけど、 ここで手紙を書く人って、けっこういるらしい。

 

相手は…恋人、友人、家族。 中には、もうこの世にいない人宛てに書く人も、いるとかいないとか。

 

届かないかもしれない。 でも書いてみたくなるんだね、たぶん。

 

空を見てたら、ふっと思い出す人。

 

「元気にしてるか?」って。

 

「いろいろあったけど、まあ、なんとかやってるよ」って。

僕は手紙は書かなかったけど、 ポストの前で少しだけ、風に黙ってうなずいてきた。

 

景色も見事だけど、 このポストが一番、印象に残ったかもしれない。

 

手紙を出さなくてもいい。 ちょっと立ち止まって、 誰かのことを思い出すだけでも、ここは素敵な場所。