
今日は歯医者の日。
写真は、いま私が座っている待合室である。
静かだ。
とても静かだ。
しかし、私の心臓だけは
ドと異常な音を立てている。
理由は一つ。
今日はおそらく、麻酔をする。
歯茎に注射。
この言葉だけで、私の精神はすでに半分崩壊している。
注射恐怖症の私にとって、それはまさに針地獄コース確定の宣告だ。
しかし、この歯医者さんは腕がいい。
麻酔も驚くほど痛くない。
それは過去の経験から分かっている。
…分かってはいる。
だが、怖いものは怖い。
人間とは不思議な生き物で、
理性は「大丈夫だ」と言うのに、
本能は「逃げろ」と叫ぶのである。
いっそ麻酔なしでお願いしようか。
そんな勇ましい考えが一瞬よぎる。
しかしそれを選んだ瞬間、
麻酔以上の痛み――
本物の地獄が待っているのは間違いない。
進むも地獄。
引くも地獄。
この言葉は、きっと歯医者のために生まれた。
ええい。
そもそも何故、虫歯などというものがこの世に存在するのだ。
甘いものを食べた罪か。
それとも歯磨きをサボった報いか。
そんな哲学的なことを考えていると、
「小川さーん」
と呼ばれた。
……来た。
運命の時である。
「大丈夫ですよ、チクっとするだけですから」
このセリフが一番信用できないのは、
なぜか歯医者の世界共通である。
