子供の頃、僕はなんでもストロベリー派だった。
ポッキーも、チョコレートも、ドーナツも。
選べるなら迷わずピンク。
ストロベリーこそが、僕の中では“王様”だった。
甘くて、わかりやすくて、ちょっと特別。
あの味が、すべてだった。
だから、抹茶なんて見向きもしなかった。
苦いだけの、よくわからない大人の食べ物。
なぜそれを好んで食べるのか、正直まったく理解できなかった。
あ!?
たとえば演歌もそうだ。
昔は、年寄りの聞く音楽だと思っていた。
正直、少しうっとおしくさえ感じていた。
けれど今は違う。
あの歌詞が、しみじみと染み渡る。
なぜあんなにも、まっすぐに心に入ってくるのか。
なぜあんなにも、胸の奥に引っかかるのか。
きっとそれは、
自分の中に「わかる部分」が増えてきたからなのだろう。
抹茶も、演歌も。
若い頃には気づけなかった“深み”が、
年を重ねるごとに、少しずつ見えてくる。
苦味の中にある旨み。
哀しさの中にある優しさ。
それがわかるようになった自分を、
少しだけ、悪くないと思っている。
奥さんと「まっちゃっちゃー」と笑いながら、
抹茶と抹茶味のポンデリングを味わいながら
そんなことをふと思う、食後のひととき。
