「民のかまどは賑わいにけり」
仁徳天皇の逸話として語り継がれる有名な話です。
都を見渡した時、家々のかまどから煙が上がっていないことに気付いた天皇は、民の暮らしが苦しいことを知ります。そこで自らの贅沢をやめ、税を免除し、まず民の生活を立て直すことを優先したといいます。
数年後、再び都を見渡した時、あちこちの家から炊事の煙が立ち上る光景を見て喜んだそうです。
もちろん、千年以上も前の話です。史実かどうかはともかく、この話に込められた考え方には深く考えさせられます。
国の豊かさとは何でしょうか。
立派な建物でしょうか。大きな予算でしょうか。
数字だけを見れば、様々な指標があります。しかし本当の豊かさとは、一人ひとりの暮らしの中にあるのではないでしょうか。
- 家族で食卓を囲めること。
- 安心して働けること。
- 将来に少しでも希望を持てること。
そうした日々のささやかな積み重ねこそが、本当の豊かさなのだと思います。
今、求められる「かまどの煙が見える政治」
苦しいのは自分だけではありません。
物価高に悩む家庭もあります。経営に苦しむ会社もあります。将来に不安を抱える若い世代もいます。それぞれが、それぞれの場所で懸命に生きています。
だからこそ私は、今の政治家にも、まず国民の暮らしを見てほしいと思います。
数字や理屈だけではなく、人々の日常に目を向けてほしい。
仁徳天皇のように、人々のかまどの煙が見える政治であってほしい。
そんなことを願います。
お弁当屋の私が、見つめ直したい「足元」
そして、これは政治だけの話ではありません。
経営も同じかもしれません。
花むらはお弁当屋です。
もちろん、お客様の笑顔が見たい。
「美味しかったよ」
その一言のために、毎日フライパンを握り、お弁当を詰めています。
しかし最近、ふと思うことがあります。
お客様の笑顔を願うのと同じように、従業員の笑顔はどうだろうか、と。
- 毎日、熱気あふれる厨房で働いてくれている人。
- まだ外が暗い早朝から、仕込みをしてくれている人。
- 笑顔でお客様を迎えてくれるフロントスタッフ。
- どんな天気の日も配達で街を走り回ってくれている人。
その人たちは、今、笑顔で働けているだろうか。
仕事だから大変なことはもちろんあります。
会社だから厳しいことを言わなければならない瞬間もあります。
それでも、一番近くで支えてくれる仲間が疲れ切ってしまっていては、本当の意味でお客様を心からの笑顔にすることはできないと思うのです。
三つの笑顔を、すべて諦めない
- お客様に、心から喜んでいただくこと。
- 従業員が、安心して健康に働けること。
- 会社が、健全に利益を出し続けること。
どれか一つを犠牲にするのではなく、そのすべてを両立させること。
決して簡単なことではありません。
お客様に喜んでいただこうとすればコストが増えることもあります。
従業員の働きやすさを考えれば、利益とのバランスに悩むこともあります。
会社を守ろうとすれば、時には厳しい決断もしなければなりません。
それでも私は、その三つを諦めたくありません。
仁徳天皇が民のかまどの煙を見たように、私もまた花むらの仲間たちの顔を見つめ、お客様の声に耳を傾けていきたいと思います。
お客様の笑顔。
従業員の笑顔。
そして会社の未来。
その三つの笑顔が揃った時、本当の意味で豊かな会社になれるのかもしれません。
そんなことを考えながら、明日もまたお弁当を作ります。

