花むら和佐店には、なかなか対照的な二人がいます。
一人は、和佐店の店長。
基本的にイケイケどんどん。
「やってみよ!」
「いけるいける!」
「なんとかなる!」
新しいことでも、とりあえず前へ進むタイプです。
そして、もう一人。
調理担当のKAオリー(仮)。
こちらは、かなりの心配性。
まだ何も起きていないのに、
「もしこうなったらどうするん?」
「これ、大丈夫なん?」
「なんか嫌な予感する……」
と、起きるかどうかも分からない未来の心配まで、先回りして背負ってしまいます。
店長がアクセルなら、
KAオリーはブレーキ。
店長が、
「大丈夫!いける!」
と言えば、
KAオリーは、
「その“大丈夫”が一番怖いねん!」
と言う。
正反対の二人ですが、不思議なもので、一緒にいるとなんだかんだでちょうどいい。
そんな二人の日曜日。
一日の営業もそろそろ終盤。
明日から、また新しい一週間が始まります。
ごく普通の日曜日の夕方でした。
……KAオリーが、カレンダーを見るまでは。
しばらく無言で固まるKAオリー。
店長
「……何してんの?」
KAオリー
「店長」
店長
「はい」
KAオリー
「明日、休みにせえへん?」
店長
「なんでやねん」
KAオリー
「明日の日付、見てみ」
店長
「9月7日やな」
KAオリー
「そう」
店長
「それが?」
KAオリー
「9・7やで」
店長
「うん」
KAオリー
「く・なん」
店長
「……」
KAオリー
「苦難や!!」
店長
「語呂合わせだけで店閉めんな」
KAオリー
「いや店長、笑いごとちゃうで」
店長
「笑いごとや」
KAオリー
「しかも月曜日やで?」
店長
「月曜日やな」
KAオリー
「一週間の始まりやで?」
店長
「そうやな」
KAオリー
「つまり明日は……」
店長
「何や」
KAオリー
「苦難の一週間の始まりや」
店長
「勝手に一週間まで巻き込むな」
KAオリー
「月曜日、苦難」
店長
「はいはい」
KAオリー
「火曜日、苦難2日目」
店長
「ただの9月8日や」
KAオリー
「水曜日、中苦難」
店長
「中日みたいに言うな」
KAオリー
「木曜日、苦難も佳境」
店長
「何の物語やねん」
KAオリー
「金曜日……」
店長
「まだあるんか」
KAオリー
「ファイナル苦難」
店長
「おお、やっと終わるんか」
KAオリー
「土曜日、アフター苦難」
店長
「終わってないやないか!」
KAオリー
「そして日曜日……」
店長
「もうええって」
KAオリー
「苦難リターンズ」
店長
「永遠に終わらんやんけ!」
KAオリー
「店長……」
店長
「今度は何や」
KAオリー
「私、ほんまに怖なってきた」
店長
「自分で作った話やろ」
KAオリー
「明日の朝、店のドア開けるん怖いわ」
店長
「何が出てくんねん」
KAオリー
「苦難」
店長
「苦難はドアの向こうで待機せえへん」
KAオリー
「でも店長」
店長
「ん?」
KAオリー
「もし明日、何か起きたらどうする?」
店長
「何も起きへん」
KAオリー
「絶対?」
店長
「まあ、絶対とは言わんけど」
KAオリー
「ほらぁぁぁぁ!!」
店長
「めんどくさいな!」
KAオリー
「やっぱり何かあるんや!」
店長
「普通に仕事してたらええねん」
KAオリー
「ほんま?」
店長
「ほんま」
KAオリー
「……ほな私、明日どうしたらええ?」
店長
「いつも通り来て」
KAオリー
「うん」
店長
「いつも通り弁当作って」
KAオリー
「うん」
店長
「いつも通りお客様迎えて」
KAオリー
「うん」
店長
「満腹のり弁もしっかり作っとけ」
KAオリー
「なんで?」
店長
「苦難が来ても、腹だけは満たしとこ」
KAオリー
「急にええこと言うな!」
店長
「花むらやからな」
KAオリー
「……店長」
店長
「何や」
KAオリー
「満腹のり弁、・・・・止めて」
店長
「なんで?」
KAオリー
「9月7日・・・喰う‥難・・・食い過ぎ注意やってえええええ」
店長
「仕事せえ」
そんなわけで。
明日は9月7日。
KAオリーにとっては「苦難の日」。
そして「苦難の一週間」の始まりらしいです。
もちろん世間一般では、
ごく普通の月曜日です。
和佐店も、いつも通り営業いたします。
たぶん。
……いや、ちゃんと営業いたします。
KAオリーが無事に出勤してくれば。
ちなみに店長は、
「9月7日?なんかええことあるんちゃう?」
くらいに思っています。
アクセルとブレーキ。
この二人が今日も同じ厨房に立っているので、和佐店はたぶん大丈夫です。
明日も皆さまのご来店をお待ちしております。
そしてKAオリーよ。
苦難はたぶん来ません。
喰う難も、たぶん来ません。
でも満腹のり弁は、明日もちゃんと作ります。
たぶん。
……いや、ちゃんと作ります。
和佐店は今日も平和です。
