秋ですねえ。
秋は昔の記憶を呼び起こす季節なのかも知れません。
秋には、よその家の前を歩くと、
サンマを焼く匂いがふわっとしてきたものです。
夕方になると、どこからか煙が上がっていて、
「今日の晩ごはんはサンマなんやなあ」って、
知らん家の食卓の気配まで想像できた。
あれ、もう見なくなりましたねえ。
家で炭を起こすことも少なくなったし、
煙が服につくのを嫌がる時代やし、
魚は焼くよりレンジか、外食か、パックのものか。
それはそれで、今の暮らしなんだけど。
あの頃は、
ただ歩いてるだけで、
誰かの暮らしの匂いがしたんだなと思う。
サンマの煙の向こう側に、
家族の笑い声があったり、
テレビの音がしていたり、
お父さんの「もうええか?」の声が聞こえたりして。
季節って、匂いで思い出しますよね。
秋は、嬉しいのにちょっとだけ寂しい。
満たされるほど、胸がきゅっとなる季節。

