大好きな果物で季節を知る

頂き物の柿。

 

ひとつひとつ、手のひらにすっぽりおさまる、やさしい重さ。
甘くて、みずみずしくて、秋が始まったなあ…と感じる味です。

子どもの頃、僕の家は市場の近くにありました。
学校からの帰り道、市場の中を通り抜けて帰るのがいつもの道順。
少し薄暗いアーケードに、果物屋のおじさんの声が響く。

 

「柿、出てきたで〜。甘いで〜。」

 

その声を聞くと、
「あぁ、秋が来たんやな」と思うんです。

 

家に帰って、母にねだる。
「柿、買ってきてほしい。」
そう言いながら、なんとなく季節がひとつ動いたような気がしていた。

懐かしいなあ。

 

 季節はちゃんと巡ってきて、今年もまた柿が甘い。

 

そういえば、夏には葡萄で同じように季節を知った。
葡萄は、粒粒が可愛くて、小さな宝石みたいやと思ってたなぁ。

 

気づけば大人になって、
市場はあの頃より静かになったけれど、
柿は変わらず秋を連れてくる。

 

季節は、ちゃんと来る。
それだけで、なんかちょっとうれしいよね。