値上げの向こう側にあるもの

店舗に立っていると、ふと違和感を覚えることがある。

煮鯖幕の内、950円。

少し前までは750円。
いや、そんなに遠くない過去には590円で販売させていただいていた。

950円。
高くなったなあ、と思う。

けれど同時に、
「いや、こんなものか」とも思う自分がいる。

私は、ほぼすべての食材、容器の原価を頭に入れている。
だから、見た瞬間にだいたいの材料費が浮かぶ。

あの頃、500円台で煮鯖や鮭を出せていた時代。
確かに、よかったなあと思う。

でも同時に、こうも思う。

――あの価格は、本当に“正しかったのか”。

真夜中。
大きな鍋の前から離れず、
毎日、同じ味を守るために火を見続ける。

煮物も、焼き物も、
一つひとつ、手で仕上げていく。

そんな若い従業員たちの姿が頭をよぎる。

その仕事に対して、
この950円は決して高くない。

むしろ――

彼らの価値を、ようやく価格に乗せ始めただけかもしれない。

企業には使命がある。

それは、安く売ることだけではない。
働く人の生活を守り、
少しでも良くしていくこと。

その責任も、価格の中に含まれている。

テレビをつけると、
「4月から2500品目値上げ」というニュースが流れていた。

油、マヨネーズ、ティッシュ。

どれも、生活に欠かせないものばかりだ。

また値上げか、と思う反面、
もう驚かなくなっている自分もいる。

きっとこれは、
一時的なものではない。

時代そのものが変わったのだと思う。

だからこそ、これからは
「安いか高いか」ではなく、

「その価格に意味があるかどうか」

それを問われる時代なのかもしれない。

そして私たちは、
その問いに応え続けなければならない。