値上げの時代に、花むらが「650円」を選んだ理由

8月も、そろそろ終わりが見えてきました。

今月、花むらでは大きな変更を行いました。

洋食弁当の多くを、650円に揃えました。

これまで花むらの洋食弁当は、商品によって650円、700円、750円と価格が分かれていました。

それを、できる限り650円に揃える。

商品によっては、以前より100円の値下げになったものもあります。

今の時代に、なぜ値下げなのか。

今日は、そのことについて少し書いてみたいと思います。

「民のかまど」という昔の話

仁徳天皇の「民のかまど」という有名な逸話があります。

高台から民家を眺めたところ、家々のかまどから炊事の煙が立っていない。

「民は貧しく、飯を炊くことさえ難しいのではないか」

そう考え、民の負担を軽くした――。

『日本書紀』に伝えられている話です。

もちろん、私が仁徳天皇を気取ろうなどという、おこがましい話ではありません。

会社の事務所から和歌山市を眺めて、

「おお、今日はかまどの煙が少ないぞ」

なんて言っているわけでもありません。

そもそも今の家から、かまどの煙なんて出ません。

ただ、この話を思い出すことがあります。

商売をしていると、どうしても自分たちの事情を中心に考えてしまいます。

材料費が上がった。

容器代が上がった。

人件費が上がった。

電気代も上がった。

だから、

「もう値上げするしかない」

と考える。

確かに、それは間違いではありません。

実際、一部の食材を除けば、花むらが仕入れている材料や容器の価格も、まだまだ上がり続けています。

正直、勘弁してくれと思うこともあります。

でも、ある時ふと思いました。

上がっているのは、花むらの仕入れだけではない。

お客様の暮らしだって、同じように上がっている

スーパーへ行っても高い。

電気代も高い。

ガソリンも高い。

日用品も高い。

あれも上がった。

これも上がった。

お客様の暮らしそのものが、高くなっています。

そんな中で、こちらの都合だけを見て、

「仕入れが上がりましたので、また値上げします」

「また上がりましたので、また値上げします」

と、どこまでも続けていいのだろうか。

そう考えるようになりました。

今の時代、かまどの煙を見ることはできません。

でも、お店に立っていると、別の形で見えることがあります。

商品を手に取って、値段を見て戻される姿。

650円と700円の弁当の前で少し迷われる姿。

以前よりも価格をよく見て商品を選ばれるお客様。

もしかしたら、そういうところに、

現代の「かまどの煙」があるのかもしれません。

だから8月、650円にしました

今回、洋食弁当の多くを650円に揃えた理由の一つは、価格を分かりやすくするためです。

これまで商品によって価格がバラバラだったものを揃えることで、お客様にも分かりやすくなる。

そして店舗で働く従業員にとっても、レジや商品案内などのオペレーションがシンプルになります。

しかし、それだけではありません。

やっぱり一番は、

できるだけお手頃な価格で、お腹いっぱい食べてもらいたい。

ということです。

「最近、何でも高いなあ」

そんな時代だからこそ、

花むらに来た時くらい、

「650円やったら、ええやん」

と思ってもらいたい。

そのために、商品によっては50円、100円と価格を下げました。

経営する側からすれば、なかなか勇気のいる変更です。

でも、やってみる価値はあると思いました。

ただし、良いことばかりではありません

ここは、正直に書いておきたいと思います。

650円という価格を実現するために、一部の商品では容器を変更しました。

そして、その変更について、

「前より見た目がしょぼくなった」

「花むららしさがなくなった」

という声があることも、私たちは知っています。

これは、

「安くしたんだから仕方ないでしょう」

で済ませてはいけないと思っています。

なぜなら、

価格を下げることと、商品の魅力を下げることは別の話だからです。

650円にした。

はい完成。

ではありません。

むしろ8月は、スタートだったと思っています。

「この値段ならこんなもん」を言わない

物価が上がっている。

650円で売っている。

だから、

「この値段なら、こんなもんですよ」

と言ってしまえば簡単です。

でも、その言葉を言った瞬間に、考えることをやめてしまいます。

盛り付けでもっと良くできないか。

彩りを変えられないか。

同じ容器でも、もっと美味しそうに見せられないか。

食材の組み合わせを工夫できないか。

650円の中でも、まだまだできることはあるはずです。

値上げをしないために、魅力を落とす。

それでは意味がありません。

一方で、

魅力を守るために、何でもかんでも値上げする。

それも、私たちが目指したい商売とは少し違います。

その間で、知恵を絞る。

面倒くさいところですが(笑)、たぶんそこが私たちの仕事なのでしょう。

650円も。そして「ちょっと贅沢」も。

そして、もう一つ。

花むらはこれから、何もかも650円にしようとしているわけではありません。

普段のお昼に気軽に選んでもらえる650円のお弁当。

一方で、

「今日はちょっとええ弁当食べよう」

「850円でも、これは食べてみたい」

と思っていただける、ボリュームや美味しさにしっかり価値のある商品。

この両方があっていいと思っています。

普段使いの650円。

そして、

値段ではなく、価値で選んでいただく850円以上の商品。

これからは、この二つをもっと磨いていきます。

花むらの「かまどの煙」は、お客様の顔にある

仁徳天皇の時代なら、家々から上がる煙を見れば、民の暮らしが見えたのかもしれません。

では、今の花むらは何を見るのか。

たぶん、数字だけではありません。

お客様が商品を手に取る姿。

値札を見る表情。

「これ美味しかったで」と言ってくださる声。

反対に、

「前の方が良かったな」

という声。

その一つ一つを見ながら、

今、お客様が何を求めているのかを考えていく。

それが、私たちにとっての「かまどの煙」なのだと思います。

8月、花むらは大きく価格を変えました。

でも、これはゴールではありません。

650円でも、花むららしく。

少し高くても、「それでも食べたい」と思ってもらえる商品を。

安さだけでもない。

高級さだけでもない。

お客様の暮らしと、自分たちの商売の両方を見ながら、その間で知恵を絞る。

9月からも、まだまだ試行錯誤は続きます。

そしていつか、

「最近なんでも高いけど、花むらはよう頑張ってるな」

そんなふうに思っていただけたら。

私たちにとっては、それが一番うれしいことなのかもしれません。