先日、ある人に言われました。
「花むらさん、食料品の消費税が1%になったら追い風じゃないですか? 外食の人たちは頭を抱えていますよ」
なるほど。外から見れば、たしかにそう見えるのかもしれません。
でも正直なところ、私は今の時点では「追い風だ」と喜ぶ気持ちより、不安の方がずっと大きいです。
もちろん、外食産業の皆さんが感じている不安も相当なものだと思います。
持ち帰りの食料品だけ税率が下がり、店内で食べる外食との税率差が広がれば、「同じ食事なのに」という戸惑いも出るでしょう。
私たち弁当屋にとって有利に働く部分があるとしても、それをもって「こちらは得をする側です」と単純に喜べる話ではないと思っています。
飲食に関わる仕事は、形こそ違っても、原材料費、人件費、光熱費の上昇と向き合っている点では同じです。
だから外食産業さんの苦労を横目に、
「弁当屋には追い風や」
なんていう気持ちには、とてもなれません。
そして、弁当屋にも弁当屋なりの不安があります。
消費税が下がることと、弁当を作るコストが下がることは、まったく別の話だからです。
米、肉、魚、野菜、油、調味料、容器、光熱費、人件費。
私たちが毎日使うものの多くは、ここ数年ずっと値上がりと向き合ってきました。
そして来年4月まで、まだ時間があります。
その頃まで仕入価格が今のままでいてくれる保証なんてありません。
むしろ現場にいる感覚としては、
「まだ上がるものが出てくるだろうな」
と身構えてしまいます。
実際、お弁当屋さんの経営環境もかなり厳しくなっています。
お弁当屋さんの倒産は過去最多水準まで増えていると報じられています。
原材料費、人件費、光熱費、包装資材。
さまざまなコストが上がる一方で、それをそのまま販売価格に乗せられるわけではありません。
これ、弁当屋をやっているとよく分かります。
「原価が上がったから、その分値上げします」
と簡単には言えません。
弁当という商品には、やっぱりどこかに「手頃であってほしい」という期待があります。
100円、200円と値段が上がれば、それまで気軽に買ってくださっていた方が、
「今日はやめとこうかな」
となるかもしれない。
だからギリギリまで我慢する。
でも我慢すれば利益が削られる。
その状態が続けば、会社そのものが持たなくなる。
そんな業界の真っただ中にいるところへ、
「食料品の消費税が1%になります」
という話がやってくる。
お客様からすれば当然、
「税金が下がるんだから、弁当も安くなるよね」
という期待が生まれると思います。
それはごく自然な感覚です。
でも、その時もし材料費が今よりさらに上がっていたらどうするのか。
米や肉や油がまた値上がりした。
人件費も上がった。
電気代も上がった。
その状態で消費税だけが下がる。
店側ではコストが増えているのに、お客様からは「安くなるはず」という期待が生まれる。
私が怖いのは、むしろそこです。
今まで税込650円だった商品をどうするのか。
そのまま650円にするのか。
税率分をそのまま下げるのか。
少し価格を下げて、別の形でも還元するのか。
あるいは価格は維持しながら、ご飯大盛り無料や、かやくご飯・赤飯への変更サービスなどでお客様に返していくのか。
まだ答えは出ていません。
ただ、何もしないというのも違う気がしています。
せっかくお客様の負担を軽くするための制度なら、花むらとしても「ちょっと得したな」と感じてもらえる形は作りたい。
一方で、それを無理して会社が苦しくなり、数年後に店そのものがなくなったら意味がありません。
ここが経営の難しいところです。
お客様に喜んでもらいたい。
できれば値段も抑えたい。
量も減らしたくない。
材料の質も落としたくない。
従業員の給料も上げたい。
会社も存続させたい。
全部、本音です。
でも、全部を同時に満たす魔法はありません(笑)
そしてこれは、きっと外食産業の皆さんも同じなんだと思います。
業態は違っても、
「できるだけお客様には負担をかけたくない」
「でも、店は続けなければならない」
その間で悩んでいる。
だから今回の話を、
弁当屋対外食、
どちらが得で、どちらが損、
という話だけにはしたくありません。
食を提供する側全体が、かなり厳しい環境の中で、それぞれどう生き残っていくのか。
私はそちらの方が気になります。
「弁当屋さんには追い風でしょう」
と言われても、今の私は素直に「そうですね」とは言えません。
確かに、弁当を選んでくださる方が増える可能性はある。
その意味では追い風になる部分もあるでしょう。
でも同時に価格への期待も大きくなり、仕入れや人件費は別の方向へ動いている。
そう考えると、
「やったー、消費税1%だ」
というより、
「さて……これ、どうする?」
というのが今の本音です。
来年4月まで、まだ時間があります。
その間にも材料費は動くでしょう。世の中の物価も変わるでしょう。
花むらとしてどうするかは、数字を見ながら慎重に考えていきます。
安くすることだけが、お客様のためなのか。
長く店を続けることも、お客様のためではないのか。
そして、弁当屋も外食店も含めて、
食に関わる店がちゃんと商売を続けられることも、大事なんじゃないか。
そんなことを考えながら、
これから何度も電卓を叩くことになりそうです(笑)
